キムラヨウヘイ「エリザベス女王杯の有力馬診断の総まとめ(後編)」

―クインズミラーグロ 牝5 藤岡康 56 美北 和田道
距離2200適性も外回りコース適性も低い。
前走府中牝馬Sでは外回り1800舞台条件で、ラスト1F過ぎ辺りでは勝利まで有り得そうな脚色だったが、ラスト100mで急失速で12着という凡着順に。
OP昇級後のキャリアはほぼ極端内枠を引いて使える脚が短いという欠点を覆い隠す好立ち回りで好走結果を実現させてきた経緯で、唯一の非内枠だった福島牝馬Sでも展開ド嵌まりの幸運あったモノだった。
仮に枠順好転しても、今回の距離延長・外回りコースを乗り越えるコトは至難と言わざるを得ない。

▽ジュールポレール 牝4 幸 56 栗東 西園
まずは前々走VM◎推奨見解を参照↓
『ポイントとしては「現4歳のクラシック路線馬の低レベル」と「古馬の上級路線馬の地盤沈下」という状況。
それらに該当する馬は思いのほか強くない可能性が割りとあって、ならばVM前哨戦の中で最もレベル高かった阪神牝馬Sで確かな急上昇を見せ付けたコノ馬が難なく突き破れる薄い壁しか存在していないのだと。
ソラを使う面があるので3走前までは派手な結果は無かったが、2走前は直線で抜け出してソラを使いながらのアノ結果で一皮むけた感があって、そして前走でも1頭で抜け出す様な難しい競馬になったのも響いた印象。逆に言えば大雑把な話ですが横綱ミッキークイーンよりもスピード感は見せていたくらいでした。
前走はレースの流れと直線での駆け引きで相手に分がありましたが、今回はよりスピードという要素が問われてくる条件且つ中上位馬が揃っていますので得意の競り合いの形になるはずのレースで…このいきなりのG1挑戦でも好勝負は十分に視野に入ると見ます。』
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その後に降級して降級初戦勝利からまたも一気にG1挑戦となる今回。
その前走準OP戦では0.0秒差の辛勝でしたが、それは上記の通り着差を付け辛い自身性質による小着差なので、少なくともソレで大したコト無い馬だとは見るべきではありません。
なので能力的にはココでも決して見劣らない馬だと見たいですが、不安要素としては距離面(中長距離)が挙がります。
VMでもスピード能力を評価して阪神牝馬Sからのノビシロを見込んだ評価をしましたが、それだけに今度はVM当時ほどは走れないという見方をしなければなりません。
昨年エリ女は非距離適性馬クイーンズリングが勝利しましたが、それは枠順と鞍上と展開が全てピタリと嵌まったモノなので…その上で相手関係も昨年以上に揃っているので完全マイラー適性馬の出番はあまり見込めないと見ます。

▽マキシマムドパリ 牝5 藤岡佑 56 栗東 松元茂
エリ女の穴パターンの一つは、牡馬混合G2京都大賞典での凡走馬狙い…そもそもコノ馬は本年の古馬牝馬距離二千重賞をダブル制覇しているだけに、距離適性的には最もエリ女向きの馬だと言える一頭です。
前々走クイーンSはレース3週前にフレグモーネで4日間お休みという順調さを欠いた調整過程。
「休んだのは1日だけだから大丈夫」みたいな談話はよく耳にすると思いますが、その感覚で言えば(実際にもそのはずですが)4日間ってのは大きいに決まっています。まして、それが栗東ではなく(調教施設整っていない)函館滞在時なので、通常以上に尾を引く事象だったはず。そういう状態面での瑕疵か、そもそも小回り1800が距離不足だったのもその通りだと思いますが、前半からの追走力不足露呈で最後も全く上位に迫るような脚を見せずの敗走でした。
前走京都大賞典は牝馬は負けて良いレースなので9着でも悪くないですが、その上で「落ち着きすぎ」「これまでで一番緩い」など状態面でネガティブな話がわんさか出ていた出走過程でもありました。
明らかに近2走は走れる状況になかったというのが全てなので、予ねてからの大目標であるエリ女に向けての叩き2戦目の確かな上昇話があれば飛び付きたいエリ女穴パターン馬なのですが…ちょっとリズムを崩し過ぎている印象で早期立て直しは簡単ではないかも知れません・・・。

〇ヴィブロス 牝4 ルメール 56 栗東 友道
前走府中牝馬Sは超楽逃げクロコスミアだけを前哨戦故の悠長差し競馬をした分だけ捉えられなかったという2着。
少しでもレース展開が転べば容易に逆転できる1着馬との後先(あとさき)でしたので悲観は一切不要。また、(後続を見ても)上がり最速こそ3着アドマイヤリードに譲ったものの、向こうはそもそもが一瞬の脚のみの馬でスローペース後方競馬ならば上がり最速は必然とも言える馬なので、向こうの土俵ながらヴィブロスが完勝を収めた点で不動の2着結果と言えるでしょう。
ヴィブロスの能力・操縦性の高さについては前々走ドバイG1制覇のレース振りを見ても明らかで…府中牝馬Sでは馬群密集競馬で詰まりましたが、今の荒れ馬場のエリ女では同様の不利を受ける可能性もかなり縮小するはずです。
余程のコトが無い限りは府中牝馬Sで戦った相手関係に先着を許すコトは無い=堅軸に近い評価はすべきでしょう。

―ウキヨノカゼ 牝7 横山典 56 美南 菊沢
秋華賞&菊花賞で大人気馬を飛ばした横山典×菊沢厩舎のコンビ。
もしケチを付けるとしたら一流横山典Jではなく菊沢厩舎の方になるのは当然で、菊花賞有力馬診断でも『…調教過程についてはアエロリットが“攻め”過ぎならばミッキースワローは“守り”過ぎの様な…。1週前の調教時計は軽いモノだったし、その上で日曜に時計を出さず、更には最終追い切りは単走を示唆…どれを取っても過去の調整過程とは異なる=守りに入り過ぎている印象です…何と言っても関西主場(京都阪神)の平地競走では開業以来45戦0連対の菊沢厩舎…まして関東馬にとって鬼門とも言える菊花賞ですから尚更疑って掛かるべき』と厩舎仕上げに疑問を呈しました。
気性的に枯れてきた分で(一時のスプリント路線馬から)距離長め馬にシフトしてきている近況で、スピード不足に陥っている近走マイル戦よりも距離延長はベターに転ぶ可能性は十分。
ただ、もう早い段階から12月ターコイズSを引退レースとして予定されており、だからこそ夏休み返上での[関屋記念→京成杯AH]ローテを敷いていたり駆け込みレース出走という印象もあって…ココも決して本気度窺えるエリ女参戦(いきなりの距離二二参戦)というのは買い辛い。

▽クイーンズリング 牝5 Cデムー 56 栗東 吉村
春2戦は良い所ナシでしたが、それについては以下のVM有力馬診断で触れた通りの明確な敗因がありました
『前走阪神牝馬S15着は陣営曰く道悪と落鉄(右前)が敗因との話だが、その前には寧ろ道悪は得意という戦績だったし、落鉄云々ではない前半からリズム悪い追走だったのだからもっと深刻な敗因がありそう。
また、その前走で落鉄起こした蹄に、今回からエクイロックス処理となっているのはダメージがあったという証にならないか(それについては詳しくないので…ただの事実の並列しかできませんが…)。』
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前走府中牝馬Sでは夏場休養を挟んで蹄問題をクリアしての復調を示すパフォーマンス…出遅れ外回し早仕掛けでの4着はG1前哨戦としては得るモノが大きいレース内容とも言えるはず。
本質的には距離二二は長いのでペースや乗り方に左右されるでしょうが…なので昨年エリ女1着は正にMデムーロ好騎乗が嵌まったという側面は否めないのですが、本年もMデムーロ乗り替わりとは言えども現状では同程度に高額賞金レースで勝てる騎乗を見せているCデムーロ騎乗ならの魅力も大きい…前哨戦制覇後で勢いに乗っていた昨年程の出来過ぎ結果までとは言わずも、同様に内枠好枠ゲットならば軽視はできない。

〇スマートレイアー 牝7 武豊 56 栗東 大久龍
過去年は秋初戦府中牝馬Sを使われており、そこでは3年連続で勝ち切れずの結果で、年々使える脚が鈍くなっていた。
そんな距離が短い所での爆発力については陰りが見えつつある近況だが、その代わりに母父ホワイトマズルの血が出てきてより距離長めに適性シフト…距離適性・内有利馬場・相対的なキレ味の全てが噛み合った前走京都大賞典勝利だったか。
そんな当距離路線での才能開花と共に、京都大賞典からのローテというも大きな買い材料になってくるのではないかと考える。
上記した通りこれまでは[府中牝馬S→エリ女]のローテで本番パフォーマンスを落としていた形になっていたが、その要因の一つとしては苦手東京輸送を挟む府中牝馬Sを使う弊害&激走した反動も無きにしも非ずだった様に思える(どうしても府中牝馬S前後で気を遣う調整過程を強いられてしまう)…その点で地元前哨戦使いで地元に留まっての調整過程を続けられるというのは地味に大きな好影響を与えるのではないかと睨んでいましたが…1週前に(例年以上)やれている猛調教が答えではないでしょうか。

△ディアドラ 牝3 岩田 54 栗東 橋田
△モズカッチャン 牝3 Mデムー 54 栗東 鮫島
△リスグラシュー 牝3 福永 54 栗東 矢作
秋華賞ワンツースリーがエリ女に揃って参戦という近年では無かったケース。
まず、コノ3頭の力量差についてですが、互角に近いと見ます。
前走秋華賞ではHペース且つ内有利馬場を最も利する競馬をできたのが勝ち馬ディアドラ…それも必然というよりはルメールJの進路取りは相当リスクあるモノで幸運あってのスムーズな立ち回り。それに対してリスク取らず90点競馬の無難外差し敢行したのがリスグラシューで、モズカッチャンは落鉄云々の影響は計れませんが先行ポジションも早めに先頭に立たされる競馬も割りを食らう形だったのは間違いなく。
オークスでは余力の差でモズカッチャンに軍配が挙がり、秋華賞では騎乗の差でディアドラに軍配が挙がり…これからも3頭の後先はレース毎に入れ替わってもおかしくない程度の差だと思います。
また、秋華賞メイチ過程だからエリ女では余力云々を言われそうですが、歴史的にエリ女への調整過程で緩めた馬でも強い秋華賞激走馬なら足りる傾向になっています(通用有無はデキ云々ではなく能力云々が左右している)。
つまりは最たる取捨要素は世代レベルなのだと…昨年や一昨年については世代レベル酷評して3歳馬軽視見解を出したと思いますが、今年世代ならば3歳馬重視の戦略まで有効になってくると思います。


━━━(前編)については火曜日に掲載しております。併せてお楽しみください!

プロフィール

キムラ ヨウヘイ(考えるヒント/常勝競馬)

09年より予想活動をスタート、11年からはブログ【考えるヒント(常勝競馬)】を本格始動。
その圧倒的な洞察力とセンス溢れる爆穴予想で一躍注目を浴び、競馬ブログランキングでは常に上位に名を連ねている、若手予想家の人気筆頭格。
15年には競馬誌【競馬王】5月号でメディア初登場。(現在連載中)

今年の菊花賞では◎ポポカテペトル→対抗クリンチャー(印2頭のみ)という予想で読者を驚かせた。

またレース以外の記事も持ち前の洞察力で深く切り込み、読者の好評を得ている。

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