キムラヨウヘイ 有馬記念の有力馬診断の総まとめ(前編)

※印は[★激走候補~△やや有力~▽やや軽視~―無印」を表します

―オジュウチョウサン牡7武豊57和田郎(美浦)
馬は足りないでしょう。
武豊騎手自身も、前走1000万下勝利後直後に、やや異例とも言える大分厳しめのジャッジ「一線級とは差を感じる」を下していましたから…もう完成された7歳古馬が武豊Jのジャッジを上回ってくるなんてコトは果たして?

あとは前々走後も当初は九十九里特別に参戦予定もトモ不安の為に回避して南武特別に回り、その南武特別後も一時はJC参戦が有力視されながらも回避された通り、この所のオジュウチョウサンは走る度に身体に反動を来しています。
障害馬だからと思われるかも知れませんが、それ以上に使えない事情があってのここまでの超ゆとりローテの近況になっています。

前走南部特別は見た目以上に負荷掛かる内容でしたので、もう8歳手前のオジュウチョウサンにはハードな競馬だったはずで…そこからの中6週は決して楽なローテでもないだろうと(少なくとも開成山特別から南部特別までは約4か月も空けざるを得なかった位の馬です)。

ここからは余談ですが、平地転向後の石神J降板の判断に対して一部でオーナーサイドを批判する向きもある様ですが、それは石神騎手は平地であまりに下手過ぎるから仕方ない話だと思います。
石神騎手はオーナーサイド(チョウサン)の二番馬に当たるコウキチョウサンの平地競走でも温情起用機会を与えられたにもかかわらず、再三駄騎乗で飛ばして戸崎J乗り替わりで一発回答を出されていました。
つまりは、すでに懐深いオーナーサイドからチャンスを3度も与えられて、それを見事なまでに応えられなかった経緯があるのです。

そりゃ、一戦一戦取りこぼせない戦いに挑むオジュウチョウサンに、武豊騎手が乗るよりも確実に数馬身は馬を後退させる且つ高確率で駄騎乗まで引き起こす石神J起用は…それは勝負度外視の選択でしかありえないでしょう。


▽キセキ牡4川田57中竹(栗東)
前々走天皇賞秋の超積極からの3着粘り込み、前走JCでのアーモンドアイ以外は完封の2着激走は共に高評価できるパフォーマンス。
今回も同じだけ走れれば勝ち負けでしょうが、そうも見込めないだろうポイントは[小回りコース]と[前哨戦+秋古馬三冠完走ローテ]の2点と見ます。

前者については、以下の通り明白なデータとなっています。
〇外回りコース[4-2-3-1]
×内回りコース[0-0-1-2]
この手のデータは基本的にはその他複合的な要因も含んで偶発的な数字の偏りになるのがデフォですが、そうだとしてもキセキの超大トビ走法からはやはり広いコースで伸び伸び走れてこそだと思われますので。

後者については、近年の同ローテを歩んだのは近5年で「15年2人5着ラブリーデイ・同年10人9着ワンアンドオンリー」の僅か2頭のみというレアローテです。
付け加えるならば、近7年のJC好走馬の有馬成績は[1-1-2-10]と不振で、JC→有馬で着順をUPさせたのはJCよりも有馬に重心があった17キタサンブラックのみでした。

前走JCの激闘直後の疲れは近走の比でなかったとの話もありますし、このローテでも大丈夫かはやってみないと分からない部類の話にもなりそうで。


―サウンズオブアース牡7○○57藤岡健(栗東)
まずは一昨年有馬記念8着後の回顧文を参照↓
『これは完全に状態落ちが主因だったと見て良さそう。
昨年と同ローテながら1本少ない追い切り過程だった事実や、デムーロJの「前走JCで走り過ぎちゃった」というコメントもそれを裏付けるモノ。
去年も今年も、天皇賞春の後には大きなダメージが残ってしまい、そこから結構な間隔が空く秋復帰戦の京都大賞典でも調整遅れで万全の状態で挑めていない様に、疲労面での体質の弱さが付きまとう馬でもある。
古馬になってから連戦での連続好走歴はゼロ。
これまでの経緯からすると、春初戦も完全にリフレッシュできて万全のデキで出てこられるかも少し怪しいので注意が必要。
疲労面を重視して1シーズン1度の激走タイミングを見極めたい。』
・・・
昨シーズン初戦札幌記念では4着好走
2戦目京都大賞典では横山典ヤラズ=馬自身の状態に問題有りでの大敗劇
3戦目ジャパンCでは京都大賞典と同様に馬が全く反応せずで連続大敗劇
4戦目有馬記念では連続大敗後で余力あったのか7着善戦

つまりは、元来の虚弱性に加えて高齢による影響もあってか1度走ったら当分走れない位に考えて良い馬なのだと思います。
そして、その1度に限れば、昨年にしても札幌記念で詰まり4着健闘、そして好メンバー揃いの有馬記念で7着という及第点パフォーマンスは繰り出せる現状です。

それが起きたのが3走前札幌記念4着だと言って良いでしょう…展開に恵まれたとはいえども、強敵相手での好結果でしたので大健闘です。

それが今回も繰り出せるならば善戦程度は可能なはずで、その観点で言えば4連戦目とはいえども昨年同様のJC大敗後で案外余力残しでの有馬参戦とすれば…昨年同様の7着くらいには巻き返しあっても良いかも知れません。


▽サトノダイヤモンド牡5アヴドゥ57池江寿(栗東)
まずは前走JC時の有力馬診断を参照↓
『前走京都大賞典では昨年春阪神大賞典以来の勝利。
凱旋門賞遠征を挟んで不振に苦しんでいた同馬の久々復活走であるならばジャパンカップ~有馬記念でも大いに楽しみだと言えますが、復活というよりは今春金鯱賞3着とそこまで代わり映えしないパフォーマンスだけに…。

金鯱賞後に「スローペースを間に合わない位置取りで競馬をして一応上がり最速・・・ただ中間調教過程と一緒で、そこからの伸びシロは本番でも見せてくれなかった。というのも、調教でも追走ペースを緩めた最終追い切りでは走れており、それなりの追走ペースだった1週前2週前では格下に遅れる始末だったワケ・・・その前者のレース振りで最低限の結果を残したに過ぎず、
後者(大阪杯で想定されるペース)になって大丈夫とはとても言えない様な」と書きましたが、今回京都大賞典も大逃げ馬を除けばスローペースでの低速時計決着で、だからこそ反応できた面もありそうで。

本番JCでは全体時計にしても追走ペースにしてもそれよりも相当上を要求されるワケで、それも乗りこなせそうという復活と言い切れるパフォーマンスではありませんでした。』
・・・
結果的には上記の通り、低速決着京都大賞典では間に合っても、それよりも何秒も早い時計を要求されたJCでは全く間に合わずの結果でした。
それは単純に今の能力・適性とも言うべきで、有馬記念でも京都大賞典1着・金鯱賞3着の方よりもそれ以外の足りていない結果を重視すべきで。
雨馬場有馬記念では相対的に浮上もありますが、それにしても金鯱賞・京都大賞典だけ走っても足りないはずなので…軽視。


▽マカヒキ牡5○○57友道(栗東)
まずは昨秋始動戦毎日王冠時の有力馬診断を参照↓
『近年の3歳馬の凱旋門賞挑戦はキズナとハープスターの2頭だが、ハープスターは不調に陥っていつの間にか引退で、キズナも成長案外で早々に引退してしまった。

3歳時の凱旋門賞遠征については、「例えば並のダービー馬が居たとして、その馬がダービーを制した3歳春時点で一見とっても強い馬に見えるかも知れませんが、実はその時点でも古馬に混じればOP級なのです。2歳G1馬なら、その時点では古馬の1000万下級なのです。つまりは、古馬になって以降も活躍する為には、誰しもが“大きく成長しなければならない”というのがお分かりになるかと思います」というワケですので、
もしも凱旋門賞遠征による成長の阻害があるとすれば、それが成長期3歳時点であればその影響は決しては小さくは見積もれない代物になるのではないか。

杓子定規に測れるモノではないでしょうが、一番の成長期を別の身を削るコトに費やすワケですから…現に素質馬こそ無理をしないでジックリと育てるというのが競馬界の常識として横たわっている以上、その真反対を施すコトによる後への影響が無いってコトは無いでしょう。

今春のG2三着とG1四着という結果については、道悪京都記念3着だけなら情状酌量できましたが、それなりに条件揃っていた大阪杯でもパフォーマンスを上げられなかったとなれば成長問題が槍玉に挙げるのは当然。
欧州での調教やレース経験によって当時は「馬がパワーアップ」したなんて良い話風に言われていましたが、それへの適合(欧州仕様育成)は逆に日本競馬適性を損ねるコトにも繋がるのは当然だろう(というのは、丁度凱旋門賞が終わったタイミング=サトノダイヤモンドが主に馬場問題により全く通用しなかったタイミングではシックリいく話ではないでしょうか)。
欧州経験の影響か又は母系の血が出てきた影響もあるかも知れないが、3歳春当時のキレキレのマカヒキは今は昔で、大阪杯にてルメールJから「反応が鈍い馬」だと認識されているのはもはや別馬であるというコトではないか。

過去最長の休養=頼みの綱の成長期4歳夏を挟んだ今回は変身=復活できる最後のチャンスになるだろうが、少なくとも昨秋から今春の当馬を見る限りでは3歳春当時の輝きを取り戻すのは難しそうに見えたし、鞍上内田博Jというのも本当に期待されている馬への鞍上配置ではない点で過度な期待は禁物だろう。』
・・・
個人的には予ねてから一貫して3歳時の凱旋門賞挑戦は好みでないという見解…マカヒキの帰国後のレース参戦時には毎回上記の凱旋門賞参戦批判じみたコトを書いてきましたが…本当に日本競馬界の大きな過ち=損失ではないかと思うのです。

昨秋は毎日王冠6着・天皇賞秋5着・ジャパンC4着という、着順だけ見ればそこまで悪くない結果。

ただし、その天皇賞秋5着についても、内有利決着を外枠からの唯一健闘馬として評価されている風潮でしたが、それには賛同できません…それこそ『凱旋門賞挑戦による中途半端な欧州化の成れの果て』の通りの半欧州馬だからこその善戦とも言えないでしょうか。

3歳時のマカヒキと言えばキレキレの馬でしたが、毎日王冠でも鈍さを指摘されて、秋天はその鈍さが相対的に武器になる舞台条件での激走でした。

ジャパンCでも欧州馬アイダホと同じような道中位置取りから前後してのゴール入線の4着健闘でした。

前々走札幌記念にしても、こんな上がり掛かる競馬で大味な競馬で通用するレースというのは寧ろ向いていたはずで。そこでは自ずと後方まで下がる競馬をしていましたが、これが並の馬場状態で瞬発力を問われた時には間に合う馬ではないと思います。

前走天皇賞秋は上記の通り…やはり良馬場高速決着でも足りてくる馬では無いという惨敗でした。
その辺りは、同じく凱旋門賞遠征を経て日本競馬での戦闘力を大幅ダウンしたサトノダイヤモンドとも通じる話だと思われます。
雨馬場有馬記念ならば相対的に浮上しても良さそうですが・・・。


▽クリンチャー牡4福永57宮本(栗東)
同凱旋門賞遠征惨敗馬サトノダイヤモンド・マカヒキとは対照的に、凱旋門賞適性の面でも期待されながらも全く勝負できなかったクリンチャー。
凱旋門賞17着は他にも敗因がありそうですが、フォワ賞は欧州舞台で欧州馬に混じっても脚の遅さを露呈する負け方だった様に思えます。
その前の日本競馬での4連続好走も全て鈍足振りを生かせた競馬での好結果でした。
クリンチャーに対してもマカヒキ・サトノダイヤモンドの様な凱旋門賞遠征影響が及ぶのかは分かりませんがその不確定要素がある上に、そうでなくとも日本王道G1では中々日の目を見ないだろう鈍足馬ですので…。
また、掛かる所もある馬ですので、テン乗り福永Jでどこまで攻めた騎乗ができるのか…?


△シュヴァルグラン牡6ボウマン57友道(栗東)
まずはジャパンC時の有力馬診断抜粋を参照↓
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●近2年のハーツクライ産駒の古馬混合重賞勝利馬
リスグラシュー(モレイラで初G1勝利)
ロジクライ(ルメールで復活重賞勝利)
スワーヴリチャード(デムーロで初G1勝利)
フェイムゲーム(ルメールで一変重賞勝利)
サトノクロニクル(デムーロで初重賞勝利)
マジックタイム(シュタルケで初重賞勝利)
シュヴァルグラン(ボウマンで初G1勝利)
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●芝重賞でのハーツクライ産駒の騎手国籍別成績
18:外国人騎手[5-3-2-6](複勝率62.5%)
18:日本人騎手[2-7-5-65](17.8%)

17:外国人騎手[6-3-4-6](68.4%)
17:日本人騎手[2-7-4-81](13.8%)

参考:同ディープ産駒成績
17~18外国人騎手[12-12-10-45](43.0%)
17~18日本人騎手[31-30-34-290](24.7%)
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ディープ産駒の場合にはそこまで顕著な傾向はありませんが、ハーツクライ産駒の場合には外国人騎手か日本人騎手か否かで競走パフォーマンスに顕著な変化が認められるというコトです。

単純にハーツクライ産駒の全出走例という範囲でもそうですし、もっと精度を高めるならば芝重賞のハーツクライ産駒の出走例という範囲ならば更に…共に外国人騎手騎乗時の好走率と回収率までも相当に優秀なのです。

ディープ産駒のキレ味を繰り出すのは日本人騎手にできても、ハーツクライ産駒を動かせるのは双方で大きな差があるのではないでしょうか(ティータンJなどごく一部の例外はあるかも知れませんが、外国人騎手(←来日資格が与えられる時点でイコール一流騎手)のほぼ全てに適用できる話であると考えてます…見た目の騎乗スタイルも勿論含みますが、単純に馬を動かす技術レベルの差が大きいという見解です)。

シュヴァルグランは正にその典型で、福永騎手時代には煮え切らなかったのが外国人騎手に乗り替わってG1制覇して、本年も日本人騎手で2凡走と外国人騎手で1好走という両極端結果が出ています。
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その前走ジャパンCは京都大賞典からはパフォーマンスを上げて来ましたが、メイチ局面且つベストコース且つ外国人騎手起用を思えば物足りない4着止まりという結果に。
となると、もう6歳秋を迎えて全盛期からの多少の劣化は否めない、というのがコノ馬の現状なのかも知れません。

JC1着から臨んだ昨年有馬記念では不完全燃焼競馬もあって着順を落とす3着。
それは世間的にはジャパンCの積極競馬が求められていただろうが、ジャパンCはスローペースと大箱コースと最内枠によって成し得た先行策で、イーブンな条件ならば必ずしも積極策を打てるだけの馬だとは言えないというのが本質で。それに加えて右回り・小回りもベストではなくて、その分で後手の競馬を強いられたのが響いた敗戦でした。

本年有馬記念でも、ベストフィットの鞍上ボウマンの怖さはありますが、やはり例年通りJC以上の結果をココで見込めるのかと言えば…?




━━━ (後編) へ続く。

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